小麦産地概況 ノース・ダコタ州

ノース・ダコタ州

小麦生産一般

1889年にアメリカ合衆国第39番目の州となる。同州は農業州であり全米第一の硬質春小麦(Hard Red Spring wheat)及びデュラム小麦の生産州である。大麦の生産量でも全米第一、オーツ第二位、フラックスシード第一位、菜種、そしてヒマワリ種子でも第一位と当に農業州といえる。

ノース・ダコタ州は53群から成り、農業地区は9地区に分けられている。同州南西地区のモンタナ州境のWhite Butte(Slop county)が海抜3,506フィートで、同州で最も海抜の高い場所であり、州東部ミネソタ州との州境を流れるRed River Valley沿いは海抜780フィート程である。同州を東西に走る国道94号線をBismarkから東に走ると緩やかに西高東低の平原であることが分かる。

小麦生産地帯全体が、緩やかな起伏をもつ平原であり、土壌は州西半分がモンタナ東北部より続くChestnut soilsに属し、東半分はChernozem soilsである。PNW地区の土壌で触れた通り、どちらの土壌も冷涼な地帯に分布し、Chernozem soilsの方が表土は黒色に近く、土壌が一般に深い。どちらも肥沃で穀物生産に適す。

1997年の農業センサスの結果では、小麦を栽培する農家戸数は19,488戸、内64.6%に当たる12,584戸が250エーカー以上の作付けを行っている。1997年の小麦作付け面積は、11,625,000エーカーであり、平均1戸当たりの作付け面積は596.5エーカーとなる。1戸当たり作付け規模はワシントン州より多少小さいと言える。

2000年産小麦では、硬質春小麦の作付け面積は680万エーカー、平均単位収量は36.5ブッシェル/エーカー(平年は33ブッシェル)、生産量は2億3360万ブッシェル(約636.5万トン)であった。同年産デュラム小麦は、作付け325万エーカー、単位収量27ブッシェル(平年より良)、生産量は783万ブッシェル(214万トン)であった。2001年産の硬質春小麦の作付けは、2000年に比較し約4.4%増加したが、デュラム小麦では約7%減少している。

冬小麦の作付けも行われており、2001年では約150,000エーカーであり、2000年比で25%アップである。(2001年産の冬小麦が増加した大きな理由は、2000年に作付けられた春小麦で生育の悪かったほ場の一部に、同年秋に冬小麦が作付けられたことに因る。(2000年作付け春小麦面積計:10,050千エーカー、収穫面積9,300エーカー)

春小麦の主生産地区は、北東地区(2000年産作付け面積:139万エーカー)、第二位は東中央地区(同:97万エーカー)であり、南西地区そして中央地区が略同じ規模(79~77万エーカー)で続いている。単位収量では東中央地区の41.9ブッシェル/エーカーがトップで、次に北東地区の諸郡であり平均41.1ブッシェル/エーカー、南東地区が40.2ブッシェル/エーカーである。州東部に比較し中央部から西部地方の単位収量が低めである。これは、後に触れるが年間降水量、早霜の時期等に関連する。

デュラム小麦の主産地は、同州の比較的年間降水量の少ない西部であり、農業地区北西部地区、西中央西地区そして南西地区である。北西地区にて凡そ全州の56%の作付けが行われており、西部3地区の合計は全州のデュラム作付面積の80%を占める。

播種時期は、一般の春小麦は早い地方で4月15日頃始まり、最盛期は5月1日~5月16日である。収穫は早い地区で7月上旬開始されが、最盛期は8月12日~9月7日、9月20日頃には凡そ全州で完了する。デュラム小麦の播種は、多少遅く4月26日頃開始されるが、最盛期は5月7日~5月21日である。収穫は早い所で8月9日頃であり、最盛期は8月21日~9月10日となる。9月25日までには平年全州に略完了する。


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品種

硬質春小麦(Hard Red Spring wheat)の品種を、2001年産の作付けサーベー(North Dakota Wheat commission及び North Dakota State University共同調査)の資料を基礎に述べる。

同州では30数種の硬質春小麦が作付けられているが、現在最も人気のある品種は「Russ」で昨年に続き第一位(1,205.7千エーカー、全体の17.7%を占める。1996年産より作付けが行われている)、続いて「Gunner」(1,096.8千エーカー、全体の16.1%。1997年より作付けが開始されている。)、第三位に「Oxen」(1997年に出回り出し、2001年には552.7千エーカー、全体の8.1%を占める)と成っている。品種「2375」は1997年産では全体の42.1%を占めた品種であるが、新品種に代わりつつある。

Russは地域的に見ると中央地区で53.9%を占め、続いて北中央地区にて22.5%の作付け面積を占めている。Gunnerは北東地区で32.5%、北中央地区で32.4%と州北部を中心に作付けられている。Oxenは南東地区にて34.0%、南中央地区で19.6%と州南部に多く作付けられている。2375は州東部を中心に、州全地域に亘り作付けられていたが、1996年以降発表された品種は地区毎の気象等の違いに合わせ開発された品種と言え、地区毎で人気品種に大きな差が出て来ている。

  • Russは1995年にNorth Dakota State University Foundationにて育成された矮性(semidwarf、草丈約26~30インチ)品種、黒(stem)及び赤さび(leaf)病に抵抗性を示すが、赤かび病(scab)に罹病し易い。熟期は早生である。1998~2000年産の試験場における平均単位収量は、中央部及び北東部試験場で高単位収量(53.0~61.7ブッシェル/エーカー)を示した。平均プロティン含有量は平均14.6%であった。
  • Gunnerは1995年に民間種苗会社により育成、発表された品種であり、草丈は通常の高さ(約37~40インチ)である。黒さび病(stem rust)に抵抗性を示すが、根腐れ病(root rot、菌核病の一種)に弱い。高タンパクの品種であり、各地区の試験場でのタンパク質含有量は、平均で15.3%の結果を示している。単位収量は降水量が他地区より多い(年間降水量18~20インチ)東北部試験場では過去3年平均値で61.6ブッシェル/エーカーと他の試験場結果より10ブッシェル以上多い結果であった。
  • Oxenはサウス・ダコタ農事試験場で育成・開発された品種で、1996年にリリースされた。矮性品種、黒及び黄色さび病には抵抗性があるが、赤かび病(scab)並びに根腐れ病には弱い。州南東部で高単位収量を示す。全州に亘る試験場での過去3年の平均単位収量は60.2ブッシェル/エーカーである。平均タンパク質含有量は、14.3%の試験結果となっている。
  • 2375は1990年にNorth Dakota State University Research Foundationによりリリースされた矮性品種である。早生種、黒さび病に抵抗性を持つが、根腐れ病に弱い。過去3年の試験場結果では、各地区で平均的な単位収量(51~57ブッシェル/エーカー)を示している。タンパク質含有量は、平均14.6%との結果となっている。

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製パン適性試験結果では、総合的に見てOxen、Gunner、2375そしてRussの順である。

作付けに当たり農家の品種選定の条件は、耐病性そして耐倒伏性に重点がおかれるが、新品種では耐病性に付いての実績(実際のほ場での)が少なく、結果として耐倒伏性(矮性)、試験場での高単位収量の結果の拠るところが大きい。

デュラム小麦の品種は、凡そ15品種以上作付けられているが、その内主力品種は4品種程である。

 

作付けの第一位は、Benであり、作付け面積は650.0千エーカーで全体の28.3%を占める。第二位にRenville(472.8千エーカー、全体の20.6%)、第三番手の品種はMunich(182.6千エーカー、7.9%)、次にMountrailと言う品種が続く(177.8千エーカー、全体の7.7%)。

デュラム小麦の主産地の北西地区では、2001年産作付けにおいてRenvilleが同地区の26.1%を占めトップの作付けであり、次にBenが19.9%、そしてMountrailと続く。同地区のデュラム小麦作付け面積は1,280.0千エーカーである。品種Benは南西地区の主たる品種であり、全体の77.2%を占める。西中央地区での中心品種はBen(同地区の32.3%)、次にReville(25.4%)となっている。品種Munichは北東地区で主に作付けられており、全州作付け面積(210.0千エーカー)の50.6%を占める。

  • Benはノース・ダコタ農事試験場で開発・育成され1996年にリリースされた。草丈は通常(凡そ37~43インチ)であるが、茎が強く耐倒伏性品種と言える。黒さび病、赤さび病に抵抗性を持つが、赤かび病(scab)に弱い。過去3年の西部地区試験場での平均単位収量は54.9ブッシェル/エーカーである。同時期の南西部の試験場では69.1ブッシェル/エーカーを記録している。粒はガラス質で大型、製粉適性試験(セモリナ歩留まり、スパゲッティーカラー等)では"Excellent"の評価となっている。粒のサイズは平均的大きさであり、ガラス質。製粉適性試験の総合評価は"Good"である。
  • Renvilleもノース・ダコタ農事試験場で育成され、1988年に発表された耐病性はBenと略同じである。草丈はBenより高く(約44インチ)倒伏し易い。平均単位収量は、西部地区の試験場結果では55.2ブッシェル/エーカーとなっている。粒の大きさは平均的大きさで、ガラス質粒であるが、Benより劣る。製粉適性の総合評価は"Good"となっている。
  • Mountrailはノース・ダコタ農事試験場より1998年に発表された。茎が強く耐倒伏性がある。草丈は通常である。赤さび病に弱いのは他の品種と同様である。平均単位収量は59.0ブッシェル/エーカーと良い結果を示している。粒の大きさはやや大きめであり、ガラス質粒の発生率はBen、Renvilleより劣る。製粉適性試験結果の総合評価では"Average"である。
  • Munichは同じくノース・ダコタ農事試験場で開発され、1995年にリリースされた。東部地区の試験場での単位収量は61.6ブッシェル/エーカーと高く、西部地区での同時期の試験結果56.7ブッシェルを上回る。茎は非常に強く耐倒伏性に富む。耐病性は他の品種と同様赤かび病(scab)に弱いが、さび病には抵抗性を示す。北東部で主に作付けられている。粒サイズは平均的大きさ、ガラス質発生率はMountral並である。製粉適性試験の総合評価では"Good"となっている。

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デュラム小麦の生産量はノース・ダコタ州が全米第一位(平年凡そ7,500万ブッシェル=約200万トン)であり、全米生産量の凡そ7割を生産している。モンタナが約1,000万ブッシェル強を生産し、全米第二位に位置している。但し、この二位の位置は、デュラム小麦の価格次第でアリゾナ州又はカリフォルニア州にとって代わる。

カリフォルニア州の小麦栽培は、サクラメント盆地での米の商業的栽培が成功し、その拡大と共に殆どその姿を消した。しかし、1966年にロックフェラー財団が中心となりメキシコに設立されたCIMMYT(International Maize and Wheat Improvement Center)にて高単位収量の矮性春小麦が開発された後、カリフォルニアの小麦栽培面積は急速に伸び、生産量は1978年には100万トンを突破し、1981年には250万トンの生産高に達した。アリゾナ州においても小麦の生産が同時期に開始されたが、その生産量はカリフォルニアの10分の1程度であった。CIMMYTで開発された矮性(農林10号が使われた)品種は、春小麦(低温による春化を必要としない。冬小麦は凡そ華氏37~42度の気温に50~56日遭遇し、初めて春化する)であり栽培地区に制限が無く、カリフォルニア並びにアリゾナ州のように冬季の気候が温暖である地区では、秋に播種をする作付け形態を採用している。この為、統計並びに取引上の分類では冬小麦とされる。

CIMMYTで開発された小麦は一般にメキシカンタイプ小麦と称される。メキシカンタイプ小麦(春小麦並びにデュラム小麦)の単位収量は、灌漑ほ場では通常の小麦の2~3倍、平均75~90ブッシェル/エーカーを期待出来る。アリゾナの小麦は全て灌漑ほ場で生産されている。

メキシカンタイプと称されたこれら春小麦品種は、その後ノース・ダコタにも進入したが(1967年に民間種苗会社より矮性硬質春小麦品種Red River 68がノース・ダコタにてリリースされた)、ノース・ダコタ農事試験場は製パン適性の悪さより、同州での栽培につき"Not recommended"とした。カリフォルニア及びアリゾナ州の小麦も製パン適性が劣ることから、国内並びに海外での市場を掴む事が出来ず、メキシカンタイプの小麦は飼料用小麦として取引され、作付面積は急激に減少した。

但し、メキシカンタイプのデュラム小麦はその後も生き残り、価格の良い年はアリゾナ及びカリフォルニアで大量に作付けられて来ている。

1975年のデュラム価格はノース・ダコタで平均$4.65/ブッシェルと良かった事より、それまで殆ど作付けの無かったアリゾナ州で突然デュラム小麦が栽培された。1976年のアリゾナ・デュラムの生産量は2,392万ブッシェル(価格$4.09/bu)となり、モンタナ州の同年のデュラム小麦生産量856万ブッシェル(価格$2.46)を抜き全米第二位と成った。

更に、1997年の価格も良く(平均$4.92)、翌1998年のアリゾナ州のデュラム生産量は1,512万ブッシェル(価格$4.50/bu)、カリフォルニア州では1,575万ブッシェル($3.83/bu)を生産した。同年のモンタナ州のデュラム生産量は1,204万ブッシェル($3.23)であった。尚、同年の平均農家引渡し価格は、ノース・ダコタで$3.00/buであった。出回りはアリゾナ州が一番早く、続いてカリフォルニア、一番最後にノース・ダコタとなる。

メキシカンタイプのデュラムで作られるスパゲッティーは、黄色が淡く欠点とされたが、他の項目では調理適性"良"と評価されていた。ヨーロッパにはカロチンを高度に含み、オレンジ色のセモリナを産するデュラム小麦も存在し、パスタ工場では、数種のセモリナを混ぜて、市場の要求する色を作り出すと言われる。カリフォルニア及びアリゾナ・デュラム小麦はヨーロッパ(イタリー、フランス、トルコ等)の他、北アフリカ(モロッコ、アルジェリア等)向けに輸出されている。


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(注:カロチンを多く含むデュラム小麦であっても、同時にリポオキシダーゼ(脂肪酸化酵素)を多く含む小麦では、加熱することにより同酵素がカロチンを分解する為、出来上がりのスパゲッティーの色は白っぽくなる。品種改良では、脂肪酸化酵素を下げる方向で行う必要があると言われる。)

話がかなり横道に逸れたが、1966年に設立されたCIMMYTでは、多種多様に亘る遺伝子を確保し、交雑、選別、物理的遺伝子の交換等高度な技術を駆使し、世界の食糧不足国の救済とお言う高尚な目的を持って、高単位収量の矮性小麦(主に春小麦)を開発した。この活動は米(コメ)においても行われ、フィリピンの国際米研究所よりかの有名なIRR系品種が発表されている。これらの研究はGreen Revolutionと称され、大きな成果を見た。先に、Dr. Borlaugが農林10号を取り入れての品種改良で1970年にノーベル平和賞を受賞した事に触れたが、当該賞は同博士のCIMMYTにおけるメキシカンタイプ春小麦の開発・研究が認められた結果である。

CIMMYTで開発された小麦は、食糧不足に悩むメキシコ、インド、エジプト等で大きな成果を上げた。一方、アメリカにおいては、メキシカンタイプ小麦は大手種苗会社(Dekarub 、Northrup King Co.、Cargill Seeds、Pioneer Hybrid等)の手により、ハイブリッド化されアメリカの小麦生産農家に売却され出した。政府が品種まで規定しているカナダの小麦市場を「小麦のDelicatessen」とすれば、アメリカの小麦市場は、あたかも「食品Super Market」である。しかし、このスパーでもメキシカンタイプ春小麦は受け入れられなかった。

種苗会社の商品主義は、現在化学薬品会社の遺伝子組換え(GMO)品種の開発に引き継がれている。大手の種苗会社は、化学薬品会社により次々と買収され(例えば、Dekarubは1996年3月に、Cargill社の国際種子部門は1998年6月に夫々Monsanto社により買収され、1999年3月にPioneer はUS Dupon社に買収された)、これら巨大企業は自社の農薬と抱き合わせで、遺伝子交換により開発された品種(例えばMonsanto社の除草剤:商品名Roundup Ready、Aventis社の除草剤Liberty(glufosinate))等に耐性の有る遺伝子組換え品種を販売している。大豆、コーン、綿実では既に遺伝子組換え品種が大幅に普及しているが、米並びに小麦では、開発はされたものの、種子市場への放出は先に延ばされて来た。US小麦連合会は、基本的にはGMO小麦の生産者への普及には慎重な態度を示しているが、政府指導によるGMOのラベリング(表示)には反対している。

2002年2月に、Monsanto社はRoundup Ready Spring Wheatの販売を2005年まで伸ばす事を発表した。


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気象

ノース・ダコタ州の年間平均気温は華氏36~46度であり、冬季には氷点下であるが(1月の平均気温は-2~10華氏)、夏の最高気温は100度を越す(7月の平均気温は70度前後)。

晩春のKilling Frostは北部では5月25日頃であり、南部では5月15日頃である。早秋のKilling Frostは、早い所で9月10日(南部では9月20日)頃となる。平均的には9月20日頃である。Growing Seasonと言われる日数は、北部で108~119日、中央部から南部にて120~137日となっている。全州平均で121日が無霜期間である。

年間降水量は、州西部から中央部にかけ14~18インチ、中央部は16~18インチ、州の東部3分の1では18~20インチである。降水は5、6、7月に集中しており月平均2~3インチの降水量である。4月から9月末までの降水量は各地で年降水量の凡そ80%を占める。

冬季は降雪となり、11月から3月末までほ場は雪で覆われる。2月のSnow Coverの深さは州全体で凡そ5~7インチ程である。3月末には略全州で雪解けが進む。農作業は、雪解け後、ほ場の雪解け水が捌けある程度の硬さを持つまでは開始出来ない。農作業は4月18日頃に各地で開始されるが、年によっては4月末から5月に入る事もある。

同州では夏季の降雨が多い。小麦の熟期に降雨が多いことは、病害粒及び発芽粒の発生に繋がる。又、早秋の霜が完熟前の小麦粒に霜害粒を発生する。播種後のKilling Frostは種子の不発芽又は幼苗の凍死という被害を生む。被害ほ場に再播種を実施すれば、収穫期が当然遅れ早秋のKilling Frostの被害を受ける危険性が高まる。

ノース・ダコタの気象・作況報告を読む上で、3月から4月の雪解け状況、4月の気象条件と作業の進展状況、成長期の土壌水分、開花期の気温、登熟期の気温と降水、収穫期の気象、First Killing Frostの時期等が注意点と言える。


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関連リンク


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